「眼科はどこも待つのが当たり前…」そう思っていませんか? 患者さんにとっては、長い待ち時間がストレスとなり、クリニックの評判にも影響しかねません。一方で、スタッフの皆さんも、日々の忙しさの中で「どうすればもっとスムーズに診療を進められるだろう」と感じているかもしれません。
この記事では、多くの眼科クリニックが抱える「検査待ち」と「診察待ち」という二大ボトルネックに着目し、データに基づいてクリニックの能力に本当にフィットした設定値を見つけ出し、患者さんにとってもスタッフにとっても快適な診療体制を構築するためのヒントをお伝えします。
目次
眼科特有の診療フローと、なぜ「待ち」が発生するのか?
まず、眼科の一般的な診療フローと、そこで発生しやすい「待ち」のポイントを理解することが重要です。
- 来院受付: 患者さんが来院し、受付を済ませます。
- 各種検査: 視力検査、眼圧検査、視野検査など、必要な検査を受けます。ここが最初のボトルネック「検査待ち」が発生しやすいポイントです。
- 診察: 検査が終わった患者さんから順番に、医師の診察を受けます。検査が一斉に終わったり、検査時間が短い患者さんが集中したりすると、ここで「診察待ち」が発生しやすくなります。
多くの眼科クリニックでは、予約システムを導入していますが、その主な目的は「厳密な診察開始時刻の保証」というよりも、「来院タイミングの分散」と「検査負荷の平準化」にあることが多いのではないでしょうか。特に、視野検査や初めてのコンタクトレンズ処方など、特定の時間のかかる検査が一部の時間帯に集中すると、検査機器や人員が不足し、検査待ちが長くなってしまいます。逆に、簡単な検査の患者さんばかりが続くと、検査は早く終わっても、今度は診察室の前に行列ができてしまうのです。
「なんとなく」の運営から脱却!鍵はデータに基づいた現状把握
これらの課題を解決し、最適な診療フローを構築するための第一歩は、「感覚」や「経験」だけに頼るのではなく、客観的なデータに基づいて現状を正確に把握することです。
収集・分析すべき主なデータ例:
- 予約時刻: 患者さんが予約した時間
- 来院受付時刻: 患者さんが実際に受付をした時間
- 検査終了時刻: (可能であれば、これが非常に重要です!)各種検査が完了した時間
- 診察開始時刻: 医師の診察が始まった時間
- 診療メニュー: 提供した診療内容(例:一般再診、視野検査、眼鏡処方など)
- 各診療メニューの標準的な「検査所要時間」と「診察所要時間」: クリニックとして設定している目安の時間(例:視野検査15分、視野検査後の診察5分)
これらのデータを分析することで、以下のようなことが見えてきます。
- 検査負荷は平準化されているか?: 特定の時間帯に時間のかかる検査が集中していないか?逆に、検査室が手持ち無沙汰になっている時間帯はないか?
- 「検査待ち」と「診察待ち」の実態: 実際に患者さんはどの工程で、どれくらい待っているのか?
- 患者さんの総院内滞在時間: 受付から会計終了まで、患者さんは平均してどれくらいの時間をクリニックで過ごしているのか?
データから見つける!クリニックに最適な「設定値」探求ステップ
現状が把握できたら、次はいよいよ具体的な改善アクションと設定値の見直しです。
診療メニューの特性整理と標準時間の設定(見直し) 各診療メニューについて、必要な検査内容、標準的な検査時間、医師の診察時間を客観的に評価し、必要であれば標準時間を見直します。これが全ての基本となります。
予約枠設定の最適化
- 医師の診察能力の把握: 医師が1時間あたりに診察できる平均的な患者数を把握します。
- 検査室の処理能力の把握: 同時並行で対応可能な検査の種類と数、各検査にかかる時間を考慮します。
- これらに基づき、時間帯ごとの総予約枠数を調整します。
- さらに重要なのが、患者タイプ(長時間検査が必要な方、短時間検査で済む方など)のバランスを考慮した予約枠の配分ルールを設けることです。例えば、「視野検査は30分に1名」「はじめてコンタクト処方の方と、学校健診後の診察が同時に重ならないように」「11時台は比較的短時間で終わる再診の患者さんを中心に」といった具合です。
シミュレーションと段階的導入 新しい設定値や予約ルールを導入する際は、まずシミュレーションを行い、どのような効果が期待できるか(待ち時間がどう変わるかなど)を予測します。その後、効果を測定しながら微調整を繰り返していきます。
情報共有とスタッフの協力体制 新しい運用方法を導入する際は、その目的や具体的な手順をスタッフ全員で共有し、理解を深めることが不可欠です。スタッフからのフィードバックを活かしながら、より良い運用を目指しましょう。
最適化がもたらす、患者さんとクリニック双方への大きなメリット
データに基づいた最適な設定値を見つけ出し、スムーズな診療フローを実現できれば、その効果は絶大です。
患者さんにとっては:
- 予測可能な待ち時間により、ストレスが大幅に軽減されます。
- スムーズな検査・診察で、安心して医療を受けられます。
- 結果的に院内滞在時間が短縮され、満足度が向上します。
クリニック・スタッフにとっては:
- 検査室や診察室の稼働率が上がり、クリニック全体としての業務効率が向上します。
- スタッフの業務負荷が平準化され、無駄な動きや精神的なプレッシャーが軽減されます。
- 医師は診察に集中しやすくなり、医療の質向上にも繋がります。
- 患者さんからの信頼が高まり、クリニックの評判向上、ひいては安定的な経営にも貢献します。
まとめ:快適な診療体制は「作れる!」継続的な改善を目指して
眼科クリニックにおける「待ち時間」の問題は、決して解決できないものではありません。今回ご紹介したように、自院の診療フローの特性を理解し、データに基づいて現状を分析し、仮説と検証を繰り返しながら最適な設定値を探っていくことで、必ず道は開けます。
大切なのは、「一度設定したら終わり」ではなく、継続的にデータを収集・分析し、状況の変化に合わせて柔軟に見直しを行うという姿勢です。
この記事が、貴クリニックの「待ち時間」問題解決の一助となり、患者さんにとってもスタッフにとっても、より快適な医療環境を実現するきっかけとなれば幸いです。
メディカルフォレストでは予約システムの導入支援をしております。
この記事でご紹介したようなデータに基づいた診療体制の最適化は、診療予約システムの導入と密接に関わっています。メディカルフォレストでは、眼科クリニックに特化した診療予約システムの導入と運用支援を提供しており、貴クリニックの課題解決を力強くサポートいたします。
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